金沢大学 人間社会研究域附属 地域政策研究センター金沢大学 人間社会研究域付属 地域政策センター

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2019.11.05講演会・シンポジウム

【開催報告】国際シンポジウム「地域の持続可能な未来へ、レジリエンス思考からの挑戦」

当センターでは例年、海外から研究者をお招きしてシンポジウムを開催しています。
2019年度の国際シンポジウムは下記のとおり執り行われました。
告知チラシ→◼️
シンポジウムを終えてのレポート→◼️

◆ 当日の様子

   

   

   

 

国際シンポジウム「地域の持続可能な未来へ、レジリエンス思考からの挑戦」

概要

 日 時:2019年11月2日(土) 10時〜16時30分(9時30分開場)
 場 所:金沢市文化ホール

プログラム(予定)

  ・開会挨拶
  ・趣旨説明
  ・基調講演:気候変動と都市の脆弱性、リスク、レジリエンス
    Patricia Romero-Lankao
     Senior Research Scientist, National Renewable Energy Laboratory Transportation and Hydrogen System Center,
     and Research Fellow, Mansueto Institute for Urban Innovation, the University of Chicago
  ・報告1:ダム撤去の社会・環境影響からレジリエンスを考える
    大野智彦(金沢大学人間社会研究域法学系、准教授)
  ・報告2:地域主導のエネルギー事業は地域の転換にどのように貢献できるのか?
    山下紀明(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所、主任研究員)
  ・報告3:社会的レジリエンス概念の批判的検討—ランドケアと持続可能性の観点から
    篭橋一輝(南山大学国際教養学部/社会倫理研究所、准教授)
  ・質疑・討論
  ・閉会挨拶

趣旨・目的

 現代は危機と変化・転換の時代である。たとえば、生物多様性の急激な減少は、多細胞生物出現以降地球上で6度目の大量絶滅となることが危惧され、枯渇性資源に目を転じれば、ピークオイルのように質的量的限界が現実的課題として指摘されるにいたっている。地球温暖化は、将来の壊滅的な危機として予測されるばかりでなく、気象災害の大規模化としてすでに年々進行している。こうして、現代社会の物質的環境的基盤が大きく崩れつつあり、これまで通りの技術や都市、経済構造を維持し続けることの限界が露わになってきている。
 こうした「今までどおり」ではすまない時代に、私たちは全力で抗い、新しい思考方法と実践を見いだしていかなければならない。そうした挑戦の一つが、リスクや変化のダイナミクスを扱い、対応策を見出す複雑系思考のうち、地域や環境を総体として扱うべく具体化されたレジリエンス思考である。レジリエンス思考は、レジリエンス(元に戻ることやある状態を維持すること)を目指すだけでなく、トランスフォーメイション(危機の発生を回避する新たな発展経路やシステム転換)を構想する方法である。危機と変化・転換の時代の地域研究にとって、レジリエンス思考は参照点として大いに有効であろう。
 同時に、人文社会科学が培ってきた、排除や不公平、格差に対する鋭敏さと、社会経済政治のダイナミクスに対する長期的批判的態度も、危機を理解し転換を方向づける際に重要な貢献をなし得る。異なる出自を持つアプローチが互いに学び合い、複雑でダイナミックな地域研究の社会科学的・学際的到達を確認し、発展させることが求められている。
 このような課題に応えるために、今回の国際シンポジウムにおいては、現代地域システムの崩壊と変容、再構築の可能性について、地球温暖化のもたらす危機、制度変革、地域エネルギーシステム等の諸点から取り上げ、合わせて目標設定に関わる倫理的課題を扱う。
 これらの講演と報告において、地域のダイナミクスに関わる研究枠組みを明示化することで、まずは「レジリエンス」や地域のシステム的特性をとらえるアプローチの多様さを確認したい。そして、議論を通じて、課題を設定し自身を変容させる地域の能力について、社会の複雑さと矛盾や対立への関心をふまえて理解する社会科学の可能性について共通認識を獲得するよう試みたい。