金沢大学先端観光科学研究所 野村章洋教授は、金沢大学附属病院脳卒中・心臓病等総合支援センター 竹治泰明特任助教、金沢大学医薬保健研究域医学系循環器内科学 高村雅之教授、ならびに東北大学との共同研究にて、スマートフォン歩数アプリ「KenCoM」を用いた73,975人の中年日本人のデータを解析し、日常の歩数と心血管疾患リスクの関係に性差があることを明らかにしました。
本研究は、米国心臓協会の査読誌「Journal of the American Heart Association」に2025年5月23日付で掲載されました。
【研究の背景】
歩数は健康行動の客観的な指標として広く用いられていますが、スマホアプリで長期間にわたって記録されたデータに基づいた性別ごとの心疾患リスクとの関連評価はこれまで十分に行われていませんでした。
本研究では、KenCoMアプリの利用者で、健康診断と保険診療データを統合したKenCoMヘルスケアデータベースを用いて、歩数と心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中・狭心症・心不全・心房細動)との関係を、性別に分けて評価しました。
対象:73,975人(男性55,612人・女性18,363人)、平均年齢44.1歳
【研究成果の概要】
5年間の追跡期間において、1日1万歩以上のグループ(Group 5)は、4,000歩未満のグループ(Group 1)と比較して、心血管疾患リスクが有意に13%低下しました。また、この有意なリスク低下は男性のみに認められ、女性では同様の効果は確認されませんでした。
【今後の展望】
この研究結果は、「1日1万歩」の健康推奨が中年男性の心疾患予防に有効であることを明確に支持する一方で、女性における歩数と健康との関連性にはさらなる検討が必要であることを示しています。
研究チームは、女性ではスマホ未携帯時の活動がカウントされにくい点や、身体活動の質的な違い(低強度運動の割合が高い)も関与している可能性があると指摘しています。
今後は、女性や高齢者を含む多様な集団における最適な歩数目標の再検討を行い、性別に応じた身体活動指針の策定が期待されます。
【掲載論文】
雑誌名:Journal of the American Heart Association
論文名:App-Recorded Daily Step Counts, Sex Differences, and Risk of Cardiovascular Outcomes Among Middle-Aged Population.
著者:Yasuaki Takeji , Akihiro Nomura , Hayato Tada , Soichiro Usui , Kenji Sakata, Takahiro Tabuchi , Masayuki TakamuraDOI: 10.1161/JAHA.124.040402